四国歩き遍路 「バツイチおへんろ」異色本のおもしろさ
更新2020年11月24日
ハイよ~!シルバー!のおじいです。
著者紹介
森知子(もり・ともこ)
1972年、東京生まれ鹿児島育ち。フリーライター。2000年、旅先のパキスタンで知り合ったイギリス人と国際結婚。2010年、離婚。著書にスペインの巡礼路(サンティアゴ巡礼)を900キロ歩いたエッセイ「カミーノ!(女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅)」
がある。
本書を読んでもらいたい人
四国遍路に興味がある人
中年女性の歩き遍路について知りたい人
お寺の紹介ではなく、旅での人生模様について関心がある人
異色の遍路本を読みたい人
旅の面白いエッセイを読みたい人
著者が体験した68日の四国遍路を軽い文章でテンポよく綴っています。
ユーモラスな体験談は四国遍路に出かけるハードルを下げてくれるでしょう。
本の概要
283ページ
2011年第1版発行
内容
てくてく徳島編、くらくら高知編、ちくちく愛媛編、うふうふ香川編、の4章立てになっている。
あとがきの代わりが「高野山、そしてお礼参り」。
話の中心は著者の泣き笑いエピソードだ。
普通の遍路より人との触れ合いが驚くほど多いのはライターの性だろうか。
バランス
四国遍路の巡礼エッセイには四国4県のバランスを欠いたものが多い。
徳島、高知あたりまではボリュームが多いが愛媛、香川と進むにつれて尻すぼみになる。
香川のことも知りたいのに、書かれている分量が少ないので、多少欲求不満になることがある。
その点、この本はバランスが取れている。
別格二十寺
著者は成り行きで別格寺へ廻ることを決める。
普通なら行くひとは少ない。
例えば、8日目には別格2番慈眼寺の穴禅定の様子が書いてある。
こんな話題も本書ならではの特徴だ。
類書では読んだことがない。
別格に行く予定の遍路は参考になるだろう。
宿
宿の予約は重視しておらず、善根宿(ぜんこんやど)や通夜堂、野宿でも構わないという。
さすが、諸外国を旅して来た人は違う。
けれども、そんな経験のない女性は遍路宿や旅館、ビジネスホテルに泊まろう。
早めの予約を心掛ければいい。
四国も善人ばかりとは限らないのだ。
遭難
51日目、52日目で横峯寺へ行く途中、遭難した話が出てくる。
捜索隊が出動し、救助ヘリが飛んだ。
ニュース記事になるほどの大事件。
ドジなエピソードが多いこの本だが、ここまでくると、本物感がすごい。
ちょっとやそっとのドジではない。
森知子自身に興味が湧いてもおかしくない。
どうしてあなたはそうなのか。
遍路道
わたしが遍路を経験した時、印象に残ったのは道に迷ったこと、脚が痛かったことだ。
この本ではその話にほとんど触れていない。
遍路は間違いなく普通に道に迷い、脚の痛みに苦悩する。
遍路どうしが出会えば、その話題で盛り上がる。
筆者も例外ではないはずだ。
が、そんなありふれた、誰でも経験する話題をあえて避けている。
もっと、大事な体験を優先している。
遭難がそうだ。
65日目第82番根来寺から別格19番香西寺、第83番一宮寺の行程など迷いに迷うはずが、さらりとながしている。
本書を読むとどこのお寺にもすんなりと行ける気がする。
だが、そうはいかない。
実際にへんろ道を歩けば、迷いっぱなしだ。
この本はふれあいのエピソードを読む本だ。
そう思えば、こんなにおもしろい遍路の本はない。