更新2024年12月31日
ハイよ~!シルバー!のおじいです。
今回は遍路本を読んだ感想です。
読んだのは、「僕の歩き遍路四国八十八ヶ所巡り」です。
著者プロフィール
著者 中野周平
30歳で仕事を辞め、四国遍路の通し打ちに挑む
現在は岐阜県に在住し、果樹園で働きながらイラストレーターや文筆家としても活動
理系で高学歴と聞けば、どうしても頭でっかちの堅い本をイメージしてしまう。
哲学的で論理的なお堅い文章ほど、読みにくいものはない。
偏見、そう偏見に違いない。
でも、そう考えるのは私だけであろうか。
しかし、心配はいらない。
プロフィールにあるように、この著者は文筆家でありイラストレーターなのだ。
本書を読んでみると、文章は読みやすいし、お手製のイラストが描かれていて、さらにわかりやすくなっている。
これから歩き遍路をする者にとって参考になる話が満載だ。
野宿を考えているなら、特におすすめしたい。
では、ここから具体的に内容をお伝えしょう。
筆者にとって、これが初めての遍路ではない。
区切り打ちに関しては2回も経験している。
今回のメインは野宿だ。
梅雨に歩いためずらしい記録でもある。
一番霊山寺から八十八番大窪寺まで四十六日間かかって歩き通している。
章立てが日にちごとになっているのでとてもわかりやすい。
その日の文章の終わりのページには歩いた工程がイラストで描かれている。
これは以前紹介した「私のお遍路日記 歩いて回る四国88ヵ所」と同じスタイルだ。
「私のお遍路日記」はいまでも名著であると思っている。
残念なのは、平成17年の出版であることと、同じスタイルの本が出版されてこなかったことだ。
そこに本書だ。
確かに、男と女あるいは宿泊場所の違いはある。
しかし、そんなことは問題ではない。
本書は間違いなく令和の時代の「私のお遍路日記」である。
「私のお遍路日記」の情報の古さが気になる人は是非、本書を手にとってもらいたい。
本書は2020年6月から8月にかけて、コロナ禍のなか通し打ちをしたときの記録である。
野宿
この著者の旅は何度も言うが、野宿がメインである。
野宿を経験したことがない人間からすれば、ものすごく興味をそそられる。
野宿するのは、内向的な自分にもこんなサバイバルなことができるんだぞ、という痩せ我慢のような意識があるからだそうだ。
どんなところで野宿するのだろうか。
野宿ならではの苦労話も多い。
一昔前なら場所探しであまり苦労することもなかっただろう。
ところが本書を読むと、現在では野宿禁止の場所が多いことに気づいてしまう。
不幸なことである。
これは、コロナの影響ばかりではないらしい。
民家や道から死角なるような川原でも野宿しなければならない
しかし、川原ならではのメリットを見つける。
そう、風呂代わりに川で水浴びができることだ。
四国の川がきれいでよかったと他人事ながら思う。
道の駅でもテントは張れるが、どこの道の駅でもオッケーかといえば、今はそうではない。
「野宿禁止」の張り紙によって、近所の空き地でこそこそ寝るはめにもなる。
四国にはヘンロ小屋という休憩所があり、そこでテントを張って寝るシーンも多い。
ヘンロ小屋は「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」により四国各地に作られ続けているありがたい存在だ。
その維持管理は地元のボランティアに任されている。
だから、ヘンロ小屋で野宿できるどうかは地元の判断次第だ。
お寺の通夜堂も以前は野宿の定番だと聞く。
いまは諸事情で泊まれないお寺もあり、著者はたいへん悔しい思いもした。
五十八番仙游寺では通夜堂に泊らせてもらい、お接待で温泉にも入れてもらっていた。
翌朝は初めてのお勤めを経験している。
以前からこのお寺の住職が親切なことは有名だったが、この時も変わっていないのがうれしい。
公園などの東屋も利用する野宿遍路は多い。
筆者ももちろん利用していた。
寝るのに不便だと思うが、しかたがないのだろう。
雨が降らない日は、なんでもないそのへんで寝ることもあった。
そんな日になんで熟睡できるのか。
不思議だ。
駐車場や橋の下でテントを張った時はもう7月下旬から8月上旬である。
季節柄、暑苦しさで眠れなかったようだ。
外に出ると、蚊の襲撃が待っていた。
筆者は、経営者の高齢化やコロナ対策によって、宿が廃業したり、休業したりする状況が続いていくと予想している。
そのため、民宿の空白地帯が生まれやすくなっているという。
今後もしかしたら、野宿なしでの歩き遍路が難しくなるかもしれない。
であれば、歩き遍路は、もっと野宿のことを知るべきだろう。
野宿の知ってほしい心得について、筆者はこう書く。
・菅笠はテントの上に置くべし(お遍路だという目印になる)
・近くに民家がある場合は、できれば一声かける
・日没後に設置、夜明け前に出発
・夜中に騒がない
・来た時よりも美しく
野宿遍路の全員がこの心得を守れば、野宿禁止の場所が減るに違いない。
宿
スマホとモバイルバッテリーの充電が切れそうなときは宿を利用していた。
また、身体に不安を覚えたときはもちろん野宿は無理だ。
大雨の日も宿に入るしかない。
大学時代の先輩の家や遍路が縁で親しくなった知人宅にもお世話になっていた。
旅のスタイル
・交通機関に乗ることにこだわりはないようだ。
・旅の記念に絵の具を使い各所でスケッチをする。
お世話になったひとにお礼としてプレゼントすることもあった。
・人との交流を大事にする。
だから、交流の話が類書より多い気がする。
交流がない日が続くと寂しさを感じているのがわかる。
・「休足日」を設ける
海釣りに行けば、餌の虫に苦戦する。
虫にはめっぽう弱いタイプだと本人も自覚している。
石鎚山への登頂
有名な鎖場に挑戦するも、死ぬかと思ったそうだ。
最後に
P299からp300にかけて、「今後、お遍路に挑戦される方へ」という文章が書かれている。
「お遍路の心構え」、「事前準備をしっかりと」、「旅の道中では」、「野宿する方へ」、の4項目だ。
筆者が体験してきただけに、説得力のある言葉が並んでいる。
これを読めるだけでも、儲けものである。